「消費者のための農政」を取り戻せ

執筆者:山下一仁2008年7月号

座して日本農業の衰亡と食料安保の危機を待ってはいけない。農水省きっての改革派といわれた人物が、解決策を提示する。 町村信孝官房長官が五月三十一日の講演で、「世界で食料不足の国があるのに減反しているのはもったいない。減反政策を見直せば、世界の食料価格高騰(への対応)に貢献できるのではないか」と発言したことが自民党内から反発を受け、長官は同日の記者会見で「今年すぐにやるとは言っていない」と釈明した。しかし、世界的に食料が不足し、かつ日本の食料自給率が四割を切っているのに、水田を四割も減反するというのは国民や消費者の感情に沿わないのではないだろうか。 食料が足りなければ、輸出国と供給協定を結んで不作のときに供給保証をしてもらえばよいではないかという主張もあるが、現実の国際社会では、自国が苦しいときにほかの国に食料を分けてくれるような国はない。日本でも戦後の食料難時代、生産県の知事たちは東京などの消費県へのコメ供出に抵抗した。食料サミットの共同宣言でも輸出規制を抑えることについて具体的な表現は盛り込めなかった。苦しいときに外国は当てにならない。頼れるのは自国の農業しかない。食料安全保障とはそのような主張だ。そのためには農地がなければならない。戦後、人口わずか七千万人で農地が五百万ヘクタールあっても飢餓が生じた。

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