連載小説 Δ(デルタ)(22)
2017年9月18日

沖縄県・尖閣諸島の魚釣島と北小島、南小島 (C)時事
【前回までのあらすじ】
巡視船「うおつり」の乗っ取りと、海保ヘリの撃墜――“反体制”の中国人集団「愛国義勇軍」の行為は世界、特に日本に大きな衝撃を与えた。だが、事はそれだけでは済まなかった。航空自衛隊が、大陸から「センカク」方面に向かう識別不明の2機をキャッチ。那覇空港から、2機のF15が緊急発進した。
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「タリホー! イレブンオクロック」
目標発見、のコールを叫ぶや、パイロットは股間のスティックレバーを軽く前に倒した。さほど操縦桿に力をかけなくても、イーグルの愛称そのまま、猛禽類並みに反射神経を鋭く研ぎ澄ましたF15は瞬時に反応する。
機首を大きく下げたF15戦闘機は、11時の方向にわずかに機体を傾げながら切りこむような急降下をはじめた。
どんなに視力に自信のある人でも、ちぎれ雲が所どころ浮かんでいる他は、視界をさえぎるものひとつない、青々と澄み切った亜熱帯の空のどこに、中国軍機とみられる戦闘機の姿があるのか、見当すらつかないだろう。
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