騒然かつ悲惨な現場の様子を伝える現地紙(筆者提供)

 

 スペイン・カタルーニャ州で10月1日に行われた独立を問う住民投票は、州政府が登録したおよそ534万人の住民の42%余りが投票し、独立賛成が圧倒的多数の90%以上を占めた。しかし同時に、800人近い負傷者を出す最悪のシナリオになってしまった。スペイン政府は違憲である住民投票をカタルーニャ州政府が強行した不法行為が問題なのであり、投票を阻止しようとした中央政府の治安部隊と住民が衝突して多数の負傷者が出てしまったことは、法の秩序のためにやむをえなかったという立場である。ヨーロッパ各国も、憲法を遵守するスペイン政府の立場を支持している。しかしバルセロナに住み、カタルーニャ人と共に今回の投票へのカウントダウンを目撃した筆者は、なぜこれほどの惨事になってしまったのか、法の秩序では割り切れない違和感と孤立感が市民に広がるのを肌で感じている。

 そもそも世論調査でも、カタルーニャ独立支持が50パーセントを大きく超えたことは、過去に1度もなかった。「スペインのGDPの19%を占める裕福な地域カタルーニャが、自分たちの富が貧しい地域に流れていると感じている不満」というのが、カタルーニャ独立問題を語るときの常套句である。しかし固有の歴史、文化、言語を持つカタルーニャ人は、同時に商才に長けた現実主義者である。スペインから独立することはEUから出ることであり、ユーロ圏からも出ることを意味するわけで、明確なビジョンのないまま独立するリスクを、現実的に捉えている人も決して少なくなかった。にもかかわらず、「正式に住民投票を行って独立問題を集結させるべきか」という問いには、80%がイエスと答えていた。

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