[ロンドン発]英国イングランド、ウェールズで五月一日に投票が行なわれた統一地方選挙は、与党・労働党の歴史的惨敗となった。続いて行なわれた議会補欠選挙でも与党は議席を失い、就任から一年も経たない首相のゴードン・ブラウン(五七)は窮地に追い込まれた。 野党・保守党の党首デービッド・キャメロン(四一)は、十年以上遠のいている政権の奪取に向け自信を深めているが、野党に流れを大きく引き寄せる過程で重要な役割を果たした人物がいる。「影の蔵相」ジョージ・オズボーンだ。三十七歳になったばかりの保守党のホープについて、気の早い英メディアの一部は「次の次の首相」などと持ち上げている。 ブラウンの支持率急低下にはさまざまな分析がある。だが、ブレア前政権時代に「スーパー蔵相」として「英国の好調経済を支えた」と強調してきた経済運営での度重なる迷走は、有権者の大きな失望を買った。サブプライムローン問題の影響で経営難に陥った英中堅銀行ノーザン・ロックの処理でもたつき、税制では相次ぎ撤回や修正を迫られている。 一方のオズボーンは昨年、有権者の心をつかむ政策案をタイミングよく打ち出した。たとえば「百万ポンド(約二億一千万円)未満の相続税の全廃」。日本人からするとなんとも思い切った政策に映るが、住宅価格高騰で相続税の重税感を感じていた中間層に響いた。政権の「住宅バブル放置」に対する人々の怒りもあった。結局、与党は提案を事実上採用したが、このほかにも外国人富裕層への課税強化や低所得層の負担増撤回など、与党の最近の政策はオズボーン案に追随しているかのような印象を有権者に与えている。

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