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 ゴールドラッシュがあったにもかかわらず、なぜインフレが起きなかったのか? この疑問に答える前に、金本位制についての基礎事項をいくつかおさらいしておこう。

 まず、金本位制には、金貨本位制と、金地金本位制がある。

「金貨本位制」は、金(きん)そのものを本位貨幣(基礎的な貨幣)とする制度だ。貨幣の価値は金の価値だ。そして、金貨の自由鋳造と自由融解を認める。だから、仮に金貨を発行した国が消滅してしまっても、金貨を金塊に変えればよいだけのことだ。

 ところが、これには、2つの欠点がある。第1に、金貨は重いから、多額の金貨を持ち運びするのは不便だ。第2に、金(きん)の価値は高いから、どの国も、充分な量の金貨を発行するだけの金(きん)を用意するのは難しかった。

 そこで、金地金との交換を保証された中央銀行の紙幣(これを兌換紙幣と呼ぶ)とその補助貨幣を流通させることによって、金の不足を補うことが行われた。これを「金地金(きんじがね)本位制」という。

 なお、この他に、「金為替本位制」と呼ばれるものもある。これは、自国が独自に金本位制を実施出来ない場合に、金本位制を実施している他国の通貨と自国通貨を一定の率で交換するものだ。植民地で実施された例が多い。

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