新事務局長に選出されたオードレー・アズレー氏。苦難の道が待っている (C)AFP=時事

 

 パリに本部を置く国際連合教育科学文化機関(UNESCO=ユネスコ)は、世界遺産や無形文化遺産といったプロジェクトを通じて、日本人にもなじみが深い。教育、科学、文化の国際協力を通じて平和や福祉の実現を目指す国連の専門機関で、途上国での教育活動、文化交流や女性の地位向上運動を各地で展開している。

 その組織が大揺れだ。本来なら運営を主導すべき米国が脱退を表明し、イスラエルも続いた。新たな事務局長を決める選挙の最中だったこともあり、普段なら比較的地味な役回りに徹しがちなユネスコは、妙な形で注目を集めることになった。

 この騒ぎの背景を探り、ユネスコのこれまでとこれからを考えた。

米国とユネスコ「揺らぎ」の変遷

 発端は10月11日、米国の脱退方針を伝えた米誌『フォーリン・ポリシー』の報道だった。翌12日、米国務省はすでにユネスコに伝達したと発表。正式な脱退期日は2018年末で、以後はオブザーバーとしてかかわるとした。理由として、内部改革の必要性、反イスラエル傾向、2011年以来拠出を停止している分担金の滞納額増大を挙げた。

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