総選挙では争点にならなかった「憲法改正問題」の論点整理

執筆者:フォーサイト編集部2017年10月21日
9月12日、自民党の憲法改正推進本部の会合であいさつする保岡興治本部長(中央)。しかしどこまで本質に迫っているのか (C)時事

 

 今年5月3日に安倍晋三首相が公表した、自衛隊の存在を憲法に明記するという「9条加憲」案は、憲法改正論議に一石を投じた。

 当初は2020年の改正憲法施行を目指して、今秋の臨時国会で改憲案の審議を始める、というスケジュールが想定されていた。が、「モリ・カケ問題」で内閣支持率が下降するとそれも白紙になった。

 そこに突然降って沸いた臨時国会冒頭解散。10月10日公示で幕を切った衆議院議員選挙の論戦で主要争点になるかと思われたが、結局、投開票が明日22日に迫ったこの時点まで、本格的に議論されないままだ。せめて有権者にとって「政権選択」判断のよすがになればと、敢えてこのタイミングで論点整理をしてみたい。

本質に迫っていない各党の公約

 そもそも各党の公約やマニフェストでは、憲法9条改正問題についていずれも抽象的な文言を並べるにとどまり、9条問題の本質に迫るものはない。

 まず自民党。「国民の幅広い理解を得て、憲法改正を目指します」と記すものの、9条に関しては「自衛隊の明記」と記載するのみ。連立を組む公明党は、憲法9条1項2項は「今後とも堅持」するとし、自衛隊の存在を憲法に明記するという提案については「多くの国民は現在の自衛隊の活動を支持しており、憲法違反の存在とは考えていません」と否定的だ。

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