さらに5年後の中国を考えるうえで必要な視点が――(CAFP=時事

 

 20世紀を象徴する大事件であり、20世紀の世界を揺さぶったロシアにおける10月革命から100年目に当たる2017年10月、北京で中国共産党第19回全国代表大会が開催された。大会冒頭の党中央委員会報告(政治報告)において、習近平総書記は建国100周年の2049年を視野に「社会主義強国」の建設を目指すと同時に、自らの「思想」を党の「行動指針」として明文化することを内外に向け宣言した。習近平による「1強体制」の始動である。

 はたして習近平総書記は「社会主義強国」の旗を掲げ、どのような「強国」を目指すのか。人間による人間の搾取をなくし、人類平等の理想社会実現を求めながらも空しく崩壊したソ連に代わって、地上に共産主義の理想を実現させようとでもいうのか。

フィリピン人家政婦の「合法化」

 ここで話を転じ、8月末の香港に目を向けることとする。

 半年ぶりに訪ねた香港で、半世紀近く付き合っている老朋友から「中国がフィリピン出身の家政婦を合法化するかもしれない」と聞いた時、「まさか共産党政権による強固な独裁体制下の社会主義社会で……」と耳を疑った。彼の話が本当なら、中国は女性の働き手を“人質”にして、南シナ海問題でフィリピンを沈黙させようとでも目論んでいる、搦め手でフィリピンを自らの陣営に繋ぎ止めようと狙っている、と思ったものだ。中国が新しい形の銀弾(札束)外交を仕掛けているとするなら、これまでの「法の支配」やら「海洋の安全保障」といった側面とは別次元の予想外の不確定要素が、南シナ海問題に加わることを意味するだろう。

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