イデオロギー的側面を強めたボコヴァ事務局長の責任は重い (C)AFP=時事

 

 就任以来、国連などの国際機関に対して消極的な態度を隠そうともせず、国際機関の分担金を支払わないと明言してきたトランプ米大統領だが、突然のユネスコ(国連教育科学文化機関)脱退は世界を驚かせ、ニュースのトップ項目を飾った。

 しかし歴史を振り返ってみると、アメリカがユネスコを脱退したのは初めてではなく、またこれまでもイデオロギー上の問題を巡って様々な闘争が繰り広げられてきた。アメリカのユネスコ脱退や、それと同時に進められていたユネスコの新事務総長選挙については、フォーサイトでも国末憲人さんが既に書かれているが(「『米脱退』で揺れる『ユネスコ』を仏女性『新事務局長』は立て直せるか」2017年10月20日)、ここではユネスコという組織の性格と、アメリカの対ユネスコ政策について論じてみたい。

「各国の独自性尊重」という異色の機関

 国際機関は通常、国際の平和と安全、途上国の開発と貧困の撲滅、難民問題への対応、地球環境問題、普遍的人権の普及といった、1国単位で解決できない安全保障や経済問題、または国家主権の壁に阻まれてしまいがちな普遍的な価値の実現を目的に、設立されるものである。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。