原油高を謳歌できない大産油国メキシコ

執筆者:小西大輔2008年7月号

[メキシコシティ発]空前の原油価格高騰の中で、隠れた産油国メキシコが窮地に追いやられている。国の歳入の約三分の一を原油収入に依存している同国にとって、原油高は一見、追い風になりそうだが、現在、国内の石油産業は危機的状況に陥っており、国民の石油資源に対する複雑な感情から政府の処方箋にも抵抗が強く、国全体が揺れている。 原油生産量が世界六位、確認埋蔵量十四位のメキシコは、石油を含む天然資源はすべて国家に属すると憲法で規定。基本的に原油採掘などへの民間参入を認めず、国営のメキシコ石油公社(ペメックス)が石油分野を独占する。 ペメックスは一九三八年創設。メキシコ政府が一〇〇%出資し、系列会社とともに原油採掘から生産・精製までを一手に手掛ける。国内では認可形式のガソリンスタンドはすべて「ペメックス」の看板を掲げ、「エッソ」や「シェル」などの石油メジャー(国際石油資本)系のスタンドは全くと言っていいほど目にしない。 しかし近年、原油確認埋蔵量の減少が深刻化。ペメックスによると、二〇〇二年の時点で埋蔵量二百一億バレルだったのが、〇七年には百四十七億バレルと二七%も減少し、現在のペースで採掘が続けば九・二年で枯渇してしまう計算だという。主要海底油田カンタレルの埋蔵量が急減しているためで、メキシコ湾での新たな油田の発見が急務だが、ペメックスには深海探査技術がなく、外国企業との提携が不可欠な状況にある。

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