昨年6月、サイバー空間の安全保障を話し合う「サイバー・ウィーク会議」が開かれたイスラエル・テルアビブ大学に展示された「サイバーホース」。注意喚起が目的で、ウイルスやマルウェアによる被害を受けたパソコンや携帯端末の部品を集め、「トロイの木馬」を模して作られた (C)EPA=時事

 

 イスラエル諜報機関の工作員が、ロシアの大手セキュリティ企業「カスペルスキー」の内部システムへサイバー攻撃で侵入することに成功したのは、2014年のことだった。

 カスペルスキーは、モスクワを拠点にアンチウイルスなどのセキュリティソフトを販売し、ユーザー数は日本を含む全世界で4億人に達する。もちろん民間のみならず、官公庁などでの利用も少なくない。

 侵入したイスラエルの工作員は、カスペルスキーの内部システムを数カ月にわたり監視した。そこで工作員は驚きの事実を突き止める。ロシア情報機関の政府系ハッカーたちが、カスペルスキーのソフトを駆使して世界中のコンピューターを不正に検索し、米国の機密作戦についての情報を探し回っているのを発見したのだ。ちなみにカスペルスキーの創業者は、ソ連時代の諜報機関「国家保安委員会(KGB)」の技術アカデミーを卒業している人物である。

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