連載小説 Δ(デルタ)(34)
2017年12月9日

沖縄県・尖閣諸島の魚釣島と北小島、南小島 (C)時事
【前回までのあらずじ】
「かが」の飛行甲板からデルタチームを乗せたUH60が飛び立ち、作戦「オペレーション・デルタ」が発動した。門馬危機管理監の強い進言を受け、緒方首相自らが指揮を執ることになった。総理執務室はすぐに、オペレーションルームと化した。
27(承前)
「例の中国機機長の行方はわかったのか」
ソファから待ちきれない様子で官房長官の井手が質問を放った。
残念ながら、と門馬が首を振りながら滝沢の隣りに腰を下ろすと、総理と井手の2人はあからさまなため息で失望をあらわした。
「外交官パスポートで入国した可能性も考えましたが、あの便にはそうした乗客はおりませんでした。おそらく一般のツアー客にまぎれこんでイミグレを通過したものとみて、現在入国ゲートでの画像や監視ビデオから搭乗者285人全員を割り出し、出入国データと突き合わせて特定を急いでいます」
「もう沖縄にはいないんじゃないのか」
あきらめまじりの官房長官のつぶやきに滝沢がうなずきを返す。
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