税負担の多いサラリーマン。今回の増税にも割り切れない思いだろう (C)時事

 

 安倍晋三首相は「経済の好循環」を掲げて、円安などで潤った企業収益を「賃上げ」の形で家計に回すよう経済界に要請している。来年の春闘では5年連続のベースアップを実現するよう求め、定期昇給と合わせて「3%の賃上げ」を求めている。家計を潤わせて低迷している消費に火を付け、再び企業収益を底上げする「好循環」の起爆剤にしようとしているわけだ。

 ところがここへ来て、にわかに2018年度税制改正での所得税増税が固まった。給与所得850万円以上の人が増税されることになる見通しだ。いったん800万円で固まりかけたが、公明党内の反対意見に自民党が配慮した結果である。ともあれ、本来なら賃上げで手取りが増え、消費に回るかと思いきや、増税となれば、財布のひもを再び締めることになりかねない。これでは、アクセルを踏みながらブレーキをかけるようなものだ。

 しかも2019年10月には、消費税率の10%への引き上げが控えている。本来ならば、それまでに消費に力強さを取り戻しておく必要があるが、みすみす所得増税で冷や水を浴びせることになる。

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