マクロン仏大統領とともに、「欧州常設軍」をリードしていくことになるメルケル独首相 (C)EPA=時事

 

 12月中旬に行われたEU(欧州連合)外相理事会は、EUの新たな発展の一里塚になるかもしれない。ドナルド・トゥスク欧州理事会常任議長・EU大統領は「歴史的な瞬間」と誇らしげに語り、フェデリカ・モゲリーニ外交安全保障上級代表(対外活動庁代表)・EU外相は、「欧州大陸にとって歴史的な時」と喜びを表し、アンゲラ・メルケル独首相は会議の成果を「大きな1歩」と高く評価した。

 この会議については、わが国では大きく報道されなかったが、現在EUでは何が進んでいるのだろうか。

 外相理事会でEU加盟国28カ国中(イギリス・デンマーク・マルタの3カ国を除く)25カ国が正式に調印したのは、「常設の軍事協力枠組み(PESCO)」についてだった。PESCOと言われても、字句通りでは何のことかわからない。何のための協力であり、何を常設するのかわかりにくいが、当事者には感極まった特別の思いがある。その背景には、「欧州防衛構想」をめぐる長い歴史があるからだ。

「欧州防衛統合」という夢

 PESCOとは、今後設立される予定の、EU常設の軍事・防衛機構のことである。

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