2015年1月に起きた『シャルリー・エブド』襲撃テロ事件は、世界に衝撃を与えた(C)AFP=時事

 

 スペイン・カタルーニャ独立問題だのドイツ総選挙後の政権協議だのといった騒動が欧州で続き、中東で本家「イスラム国」が力を失ったこともあり、イスラム過激派テロは欧州市民の関心から次第に後退しつつある。ただ、その脅威が遠のいたわけではない。繁栄と安定のために不断の闘いが必要であるのは、いうまでもない。

過激派にいざなう「リクルーター」

 近年、欧州で起こるテロの多くは、欧州で生まれ育った若者たちによって実行される「ホームグロウン・テロ」(自家栽培テロ)である。先進国の教育を受け、価値観を共有してきたはずの若者たちが、なぜイスラム過激思想に取り込まれるのか。その鍵となる存在として以前から指摘されてきたのが、若者たちを過激派思想にいざない、シリアやイラクに戦闘員として送り出す「リクルーター」(勧誘者)である。テロを防ぐには、彼らの役割と活動の解明が欠かせないが、その実態には謎が多い。

 こうした中で昨年、興味深い手記がフランスで出版された。かつてイスラム過激派のリクルーターとして活動していたファリッド・ベニエトゥーが、著名な脱カルト活動家ドゥニア・ブザールとの協力でまとめた記録『Mon djihad Itinéraire d’un repenti(わがジハード ある改悛者の軌跡)』である。

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