ロシアIT業界の寵児、エフゲニー・カスペルスキー氏 (C)AFP=時事

 

 ロシアのIT産業といえば、カスペルスキー社(Kaspersky Lab)の名前が真っ先に挙がるだろう。

 コンピュータ・エンジニアのエフゲニー・カスペルスキー(外国ではファーストネームを英語風の発音にしたユージン・カスペルスキーと名乗ることが多い)が立ち上げたこの企業は、独自開発したウイルス対策ソフトの販売によって急成長を遂げてきた。2016年の総売り上げは6億4400万ドル、ユーザー数は実に4億人以上にも及ぶ。最大のセールスポイントは、世界でもトップクラスとされるウイルス対策ソフトの性能で、世界中の警察やサイバー犯罪対策機関とも協力関係を結んできた。前回触れたロシアのインターネット関連インフラ国産化の試みにおいても、カスペルスキーはソフトウェア部門の旗手と呼ぶべき存在である(2017年11月20日「ロシア『ソフトウェア』の驚くべき『不都合な真実』」参照)。

募る「カスペルスキー不信」

 ところが2017年9月、米上院は、カスペルスキー製セキュリティソフトを米政府内の国防・民生部門で使用することを禁じる決議を採択した。同社のソフトウェアに「バックドア(侵入口)」が存在するのではないか、との懸念が持ち上がったためである。この決議により、米連邦政府機関のコンピュータからはすべてのカスペルスキー製品をアンインストールすることが義務付けられた。

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