全日本空輸が欧州エアバス社の超大型旅客機A380導入に向けて本格検討に入った。稼ぎ頭の欧米線の需要増に応じるとともに、五月に成田に同機を就航させたシンガポール航空が、総二階建てでジャンボ機の一・五倍の広さを生かした豪華サービスを展開するのに業を煮やしてのことだ。実現すれば国内初の導入となる。 しかし先を越される形の日本航空幹部は「わが社は導入しない」と断言。理由は「座席が埋まらないから」。シンガポール航空の成田―シンガポール線はファースト、ビジネスは堅調な一方で、エコノミークラス約四百席を埋めるのに四苦八苦。往復三万円まで運賃を下げて、なんとか搭乗率七〇%前後を維持しているのが実情だという。 もちろん全日空も超大型機で採算が合いそうな路線が高需要の欧米五路線程度にとどまることは百も承知。エアバス相手に、悩みの種の整備や交換部品在庫のコストをどこまで押し付けられるかが導入のポイント。米ボーイングと競わせながら、好条件を引き出す算段だ。 エアバスの日本法人社長は、一九八〇年代後半の日米貿易摩擦の際、米通商代表部(USTR)の日本担当として市場開放を迫ったグレン・フクシマ氏。「欧米での航空機シェアはボーイング、エアバスの二大メーカーが半々なのに、日本ではエアバスは四%程度にすぎない。フクシマ氏がシェア拡大を目指し必死に売り込みをかけているため、魅力的な価格に落ち着く可能性もある」(全日空幹部)という。

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