不動産王が買い占めた東映株の「価値」

執筆者:清水常貴2008年8月号

落ち目といわれて久しい東映に目をつけた人物がいた。果たして狙いは土地なのか。たしかにそれくらいしか――。「不動産王の株買占め」と株価上昇を喝采する証券マンもいる。国内最大の不動産ファンド「ダヴィンチ・アドバイザーズ」(七月一日から持株会社化しダヴィンチ・ホールディングスに)だ。これまでは巨額の私募ファンドで資金を集め、東京・渋谷区の新宿マインズタワーを筆頭に国際赤坂ビル、“軍艦ビル”と呼ばれる芝パークビル、東京駅前のパシフィックセンチュリープレイス丸の内のオフィス部分など、大型のビルを買い漁ってきたが、最近は不動産ばかりでなく、「アルガーブ」や「プラト」といった傘下のファンド運用会社名で上場企業の株を買い集めているのである。ざっと挙げるだけでも明電舎、東京機械製作所、イヌイ建物、ユアサ・フナショク、東映、サンテック……。「ダヴィンチの金子修社長は『株取得に三千億円の資金を投下する』と語っている。信託銀行名義を使った投資もあると見られていますから、株を買い占めた企業は二十銘柄くらいに上る」(総合証券商品部長) しかも、昨春、東京・西五反田の流通関連の賃貸ビル会社、テーオーシーの株約一〇%を買い集めたときは、資産の活用を主張するダヴィンチに対して創業家の大谷卓男社長以下経営陣が猛反発し、親族に当たるホテルニューオータニのオーナー一族の協力を得て非上場化を狙ったMBO(経営陣による自社株買収)で対抗。すると「MBOの株買収価格が一株八百円では安すぎる」とダヴィンチが一株千百円で敵対的TOB(株式公開買い付け)を宣言して株式争奪戦に発展した。もっとも、テーオーシーの株価が急上昇、MBOも敵対的TOBも失敗するという結末に終わっている。このテーオーシーを巡る株式争奪戦でダヴィンチ・アドバイザーズの名前は一躍、轟いたが、狙われた企業にとっては頭の痛い存在となった。

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