外国の国賓が来日すると、天皇、皇后両陛下は歓迎の宮中晩餐会を催す。この晩餐会のルールは「どの国に対しても最高レベルでもてなす」ことである。したがって飲物一つを見ても、アフリカの国であろうと、米国であろうと、最高格付けのフランス産ワインが出される。 つまり国の大小、日本との関係の遠近によって差別をつけない。これは皇室が「政治」と切り離された存在であることと無関係ではないだろう。 一方、首相官邸で持たれる饗宴には「政治」が反映する。その国と日本の関係、首脳同士の親近感、またどのような関係を持とうとしているかで饗宴内容、特にワインが違ってくる。 中国の胡錦濤国家主席が五月に来日した折、宮中晩餐会(七日)はいつものようにフランス料理でもてなした。ワインは予想通り最高レベルで、白〈ピュリニィ・モンラッシュ96年〉、赤〈シャトー・ラトゥール90年〉、シャンパン〈ドン・ペリニョン95年〉だった。 ではその翌日、「政治」が反映する首相官邸の晩餐会はどうだったのか。約七十人が招かれた、そのメニューである。 前菜(鮑柔らか煮、湯葉豆腐、チーズの白和え等) 吸物(すっぽん茶碗むし) 造り(本まぐろ中トロ、天然鯛、伊勢海老)

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