連載小説 Δ(デルタ)(47)

執筆者:杉山隆男2018年3月10日
沖縄県・尖閣諸島の魚釣島と北小島、南小島 (C)時事

 

【前回までのあらすじ】

首相官邸で、護衛艦「かが」艦上で、巡視船「うおつり」で様々な動きと思いが交錯する中、秘密部隊デルタはセンカク目指して「かが」を飛び立った。だがその行く手には、新たな動きが――。

 

     34(承前)

「機長、アンノウンの航空機が2機、5時の方向から急接近してきます」

 デジタル化が進んだロクマルのグラスコックピットのほぼ中央に淡いグリーンに染まったレーダー画像が浮かび上がっている。左側の操縦席に座る機長が視線をやると、コーパイの指摘の通り、画像の中心に向かって右斜め後方から2つのブリップがかなりのスピードで近づいている。コックピットの暗がりの中でその2つの輝点は星のようにひときわ強い光を放っている。2点は平行にならんでいるわけではなく、ひとつは前方を行く点からわずかにずれて、つき従うように動いている。タンデム、2機編隊である。

 磁石で吸い寄せられるようなその速さから機長は間違いなくジェット機と思った。しかも2機で飛行しているということは戦闘機の可能性が高かった。空自や米軍ならロクマルのコンピュータが瞬時のうちに敵味方を識別する。アンノウン、未確認ということは、中国軍がお迎えにあらわれたに違いない……。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。