連載小説 Δ(デルタ)(最終回)

執筆者:杉山隆男2018年3月31日
沖縄県・尖閣諸島の魚釣島と北小島、南小島 (C)時事

 

【前回までのあらすじ】

秘密部隊デルタの戦いが始まった。眼前に現れた異様な光景を、隊員も、モニターで見守る官邸も凝視していた。着々と任務を遂行するデルタ、刻々と近づく中国軍機――。近未来シミュレーション小説、衝撃の最終回!

 

     37(承前)

 スクリーンの向こうでは、大蛇に胴体を巻きつけられた愛国義勇軍の男がその締めつけから何とか逃れようと、必死の形相でもがきつづけていた。仲間たちは大蛇に向けて銃を構えていたが、発砲したら、大蛇が巻きつけている男を胴体ごと銃口の方に振り向けたり、流れ弾が当たることを恐れて、なかなか踏み切れずにいるようだった。

 磯部らデルタの隊員たちも、愛国義勇軍と睨み合っていることなどすっかり失念したかのように、大蛇の方に気をとられてしまっていた。

 やがて小屋から少し離れた岩陰から不意に大柄な男が半身を剥きだしにするなり短機関銃を放って、大蛇に連射を浴びせた。岩陰に身をひそめたままでは動きがとれないため、磯部たちの標的になるのもあえて覚悟で体をさらすことにしたのだろう。

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