豪州に入り浸る中国を傍観する日本

執筆者:犬飼優2008年8月号

資源大国オーストラリアで中国が国を挙げて資源確保を図る中、「労働党とのパイプなし」の日本。“善き隣人”を失う危機に――。[シドニー発]ケビン・ラッド自身、これほど反発が出るとは思いもしなかっただろう。 いわゆる「日本素通り」だ。ラッド率いるオーストラリアの労働党は昨年十一月の総選挙でジョン・ハワードの保守連合(自由党、国民党)政権を破り、政権を奪還した。労働党政権は十一年九カ月ぶりだ。 そのラッドが三月下旬から四月半ばにかけ、関係主要国を歴訪する長期外遊に出た。新首相としての「あいさつ回り」とも言える旅は、まずは外交の基軸である米国に飛んだ。それから元宗主国の英国。そして欧州からの帰路、アジアに寄った。アジアは日本でなく、中国である。「日本軽視だ。四日間も中国に行くのなら、一日でも日本に寄るべきだ」。出発前から野党保守連合から批判が噴出した。日本は豪州にとって最大の貿易輸出先。しかも、「同じ価値観を有し、アジア太平洋で日本ほど親密なパートナーはいない」(ハワード前首相)として、対日関係を重視してきたからだ。 国内外のメディアからも「なぜ日本に行かないのか」と再三、質問攻めにあったため、ラッドは米国滞在中に急遽、「六月訪日」の調整に入り、実際に六月八日から十二日の五日間、初の訪日を果たす。

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