米露対立を深め膠着する「東欧MD計画」

執筆者:中尾卓司2008年8月号

[ウィーン発]米国の東欧ミサイル防衛(MD)計画をめぐって、米露関係はきしみ、「冷戦時代の再来」を思わせる激しい攻防となっている。MD基地の建設が予定されるポーランド、チェコを巻き込み、米露両国の反目はエスカレートする一方で、ロシアが「軍事手段で対抗」と言及し、きな臭さも漂い出した。さらには、交渉が難航するポーランドの代替候補として旧ソ連・バルト三国のリトアニアが急浮上するに至り、東欧MD計画に神経をとがらすロシアは「挑発だ」と反発を強める。 七月七―九日に開かれた北海道洞爺湖サミット(主要国首脳会議)も、東欧MD計画をめぐる米露のさや当ての舞台になった。メドベージェフ露大統領は、就任後初のサミットでブッシュ米大統領に「(MDを)受け入れられない。報復措置を取る」とやり合った。サミット開催中の八日、ライス米国務長官はプラハで、チェコ側とレーダー施設建設に関する二国間の協定に調印した。直後に露外務省はもっと過激に「軍事手段で対抗する」と声明を出した。 東欧MD計画は、弾道ミサイルを探知するレーダー施設をチェコに建設、ポーランドに迎撃ミサイル十基を配備する構想で、米国は、二〇〇九年にも基地建設に着工し、二〇一二年の完成を目指している。

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