中台直行便就航 進む香港の構造転換

執筆者:八ツ井琢磨2008年8月号

 中国本土と台湾を結ぶ直行チャーター便の週末運航が七月四日に始まった。本土側が北京・上海、台湾側が台北・高雄などの空港を開放し、週四日運航。台湾からの渡航者はこれまで、原則的に第三地を経由する必要があった。直行便を利用すれば、所要時間は台北―上海間で従来の半分の三時間以下に縮まるなど、利便性は格段に高まる。 一方、割を食うのが香港だ。二〇〇七年に台湾から香港を訪れた旅客は二百二十四万人(香港の旅客全体の八%)。うち、百五十四万人が主に乗り継ぎ目的とみられる。香港観光発展局によれば、直行便が全面解禁されれば、観光収入は最大で年四千万ドル程度減る可能性がある。 中台間の「三通」(通航、通信、通商)が進展すれば、影響はモノの中継機能にも及ぶ。〇七年の台湾と香港の商品貿易額は約三百三十億ドル(香港の商品貿易全体の約五%)で、台湾から香港に入る貨物の多くは中国本土に再輸出されている。中台間の直接貿易が可能になれば、香港を経由させる必要はなくなる。 だが、「三通」が実現しなければ香港が従来通りの役割を維持できるかというと、必ずしもそうではない。中国本土で物流インフラ整備が急ピッチで進んでいることから、香港の中継機能は既に侵食されつつある。

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