帰還困難区域の境のバリケードの内側、飯舘村長泥の峠の桜並木と鴫原良友さん=2018年4月17日(筆者撮影、以下同)

 

 東京電力福島第1原子力発電所事故の帰還困難区域を対象に集中的な除染とインフラ整備で住民の帰還を促す、国の「特定復興再生拠点区域(復興拠点)」の整備計画がこのほど福島県内の被災地6町村で決まった。飯舘村で唯一の帰還困難区域が長泥地区。2017年3月末に村の避難指示解除は解除されたが、長泥は国から除染計画も救済策も示されぬまま、半ば見捨てられていた。が、にわかに復興拠点の整備が決まり、その前提には除染で出た汚染土を再利用する計画があった。古里への愛着から「苦渋の選択」で受け入れた行政区長とともに現地を訪ねた。

 およそ1年半ぶりに訪ねた帰還困難区域の飯舘村長泥は、満開の桜に染まっていた。

 4月17日、行政区長の鴫原良友さん(67)に同行して山あいの国道399号をたどり、地区の入り口をふさぐ鉄製バリケードを開けた向こうの風景。標高約600メートルの峠から集落に続くつづら折りの道沿いで、約100本の並木の桜が咲き誇っていた。62年前の2村合併で発足した飯舘村の初代村長が長泥出身で、記念に苗木を配り、住民たちの手で育てられた。晩秋だった前回の取材時には紅葉で、自慢の桜をただ想像するほかなかった。「今年の満開は、例年より10日は早い」と見入る鴫原さん。眺めのいい峠の頂上には公園が設けられ、住民は毎春桜の下で記念写真を撮り、飲み会を催したそうだ。

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