ヘルシンキ大聖堂とアレクサンドル2世像(JICA提供)

 4月下旬にフィンランドを訪ねた。首都ヘルシンキで驚いたのは、町の中心の広場にアレクサンドル2世の立像が立っていたことである。ソウルの中心部に伊藤博文の銅像が立つことは、考えられない。それと似たような驚きを感じたのである。

 私のフィンランドについての知識は、僅かなものだった。フィンランドがロシアの圧政に苦しみ、そこから立ち上がって独立を果たしたこと、ジャン・シベリウスの交響詩「フィンランディア」は、この独立運動を背景としていたこと、日露戦争における日本の勝利がフィンランドで歓迎されたこと、第2次世界大戦において、ソ連との戦いに善戦して(冬戦争)、独立を維持したこと、戦後はソ連を配慮しつつ慎重な中立外交を推進したこと、その程度だった。

 それゆえ、フィンランドは反ロシアなのだろうと思っていた。子供のころ、ユージン・オーマンディ指揮フィラデルフィア管弦楽団による「フィンランディア」のレコードを持っていたが、これはモルモンタバナクル合唱団による合唱付きで、ナショナリズムを強烈に訴えかける演奏だった。冷戦のさなかの録音なので、反ソ的性格が強調されていたのかもしれない。実際にフィンランドとロシアとの関係はもっと複雑なものであることを、今回理解して、フィンランドの思慮深い外交に改めて敬意を深めた次第である。

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