世界遺産登録の前段となる世界遺産リストへの登録が七月に決まったタイ・カンボジア国境に位置する九世紀創建の山岳寺院「プレアビヒア(タイ語名・カオプラウィハン)」。その帰属を巡り、タイとカンボジアの間で緊張が高まる中、カンボジアは八月はじめ、「プレアビヒアの西百三十キロの国境地帯にあるタームアントム寺院遺跡にカンボジア兵が入るのをタイ軍に阻止された」と抗議。タイ側は「遺跡はタイ領だ」と反論、国境付近で両国軍兵士あわせて数千人が睨み合う状態が続いている。 そもそも国境が画定していない同遺跡周辺でカンボジアがタイの同意なしに「カンボジアの遺跡」として世界遺産への登録を目指したことが今回の緊張の原因。一度はタイ側が折れて登録申請に同意したものの、国内世論の大反発を受けて、撤回。その間に、カンボジアは遺跡に兵士を配置して「実効支配」し、登録リスト記載を成功させた。 寺院への入り口はタイ領内のため、カンボジア側が「兵士を撤収させ、共同管理とする」などの妥協をしない限り平和的な解決は困難で、国連の潘基文事務総長は七月二十一日、両国に自制を求めた。二十八日には外相会談が開かれ両国は国境付近からの兵力の撤退で合意したが、具体的な手続きは進んでいない。世界遺産リストへの登録を決めた国連教育科学文化機関(ユネスコ)は頭を抱えている。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。