(C)AFP=時事

 

 これまでの回で、マネーの歴史を第2次世界大戦まで辿ってきた。

 戦後の世界では、ブレトンウッズ体制が確立された。これは、ドルを基軸通貨とし、それに対して各国通貨が固定為替レートでリンクする制度だったが、1971年のニクソンショックをへて、変動為替制に移行した。

 この制度におけるマネーは不換紙幣であり、その気になればいくらでも増発できる。

 しかし、日本は高度成長期であり、マネーの力に頼らなかった。頼る必要がなかったのだ。この期間の経済成長は、リアルな要因が主導した。

 他の国も概してそうだった。とくに西側先進国ではそうだった。

 しかしその後、日本経済はマネーに翻弄されるようになる。つまり、経済の実体は何も変わらないのに、貨幣的な要因によって経済が大きく変動するようになったのだ。

 1980年代の後半に、日本経済はバブルに呑み込まれた。銀行が経済の構造変化に対応することを怠って不動産融資にのめりこんだ結果、不動産価格が暴騰した。

 これは、実体経済的な面から見れば日本経済が衰退したことの結果生じたものだったのだが、多くの人は逆に、日本経済が繁栄の絶頂にあるかのような錯覚に陥った。そして、投機に狂奔した。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。