銀行が焦る新型インフルエンザ対策

執筆者:鷲尾香一2008年9月号

 新型インフルエンザの大流行は、専門家の間で「“もしも発生したら”ではなく、“いつ発生するか”の問題」と言われる。厚生労働省は、新型が全国的に流行した場合、国民の約四分の一が感染し、死亡者数は約六十四万人にのぼると推計している。 新型インフルエンザは、「人的被害」を急速かつ広範囲に、そして長期間にわたって拡大させる。一回の感染流行の波は約二カ月間続くとされており、その波は一年以上繰り返すとも考えられている。そうなれば、社会システムは麻痺してしまう。一般に年齢が高くなるほど免疫力や体力は弱まる。企業の役員や幹部クラスが相次ぎ罹患すれば、企業は判断能力や経営責任の所在を失い、決済もできず倒産する可能性もある。倒産が連鎖すれば日本経済は壊滅的な打撃を受ける。 今年五月から六月にかけて三井住友海上火災保険が国内上場企業を対象に行なった調査では、回答した四百四十八社のわずか九・八%しか新型インフルエンザ対策を講じていなかったが、実はいま急速に対策の検討を進めている業種がある。経済の根本である資金の流れを担う金融機関だ。対策の主眼は「業務の継続」。 今年三月には日本銀行が「金融機関における新型インフルエンザ対策の整備について」との調査論文をまとめた。金融機関に現金を供給する日銀の役割はとりわけ重要だが、その対策は金融機関とほぼ同じだ。

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