【特別対談】定時で帰る働き方(下)

『わたし、定時で帰ります。』著者・朱野帰子×元東レ取締役・佐々木常夫

執筆者:フォーサイト編集部2018年7月22日
サラリーマン経験のある朱野さんは佐々木さんの話に何度も頷いていた

 

朱野帰子 小説『わたし、定時で帰ります。』(新潮社)の中で、主人公の結衣が父親の写真を見つめる場面が出てきますが、あれは私自身の経験に基づいているんです。私にとって”働く人のあるべき姿”は、バブル期が働き盛りだった父なんですね。仕事ばかりでほとんど家にはいませんでしたが、そういう家庭に育った私としては、父の働き方を肯定してあげたい気持ちが少なからずあるんです。先ほど「最近の経営者たちは長時間勤務を経た自分の成功体験を否定したくない」というお話がありました。何と言いましょうか、佐々木さんに父や私の働き方を否定されたとまでは思わないんですけど、これまでの人生がグラグラと揺らいでいるというか……。

佐々木常夫 ワハハ。

朱野 でも、それを見直してみようと考えた時、「きっと佐々木さんの部下だった方たちも同じように考えたんじゃないかな」って思ったんです。自分が頑張ってきたものや、信じて来たものは簡単には変えられませんね。でも、佐々木さんは一方的に「働き方を変えなさい」と言っていたわけではなくて、身をもって定時での帰宅を実践しながら、仕事でしっかり結果を出しておられた。だからこそ、部下たちは納得できたんでしょう。

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