テントの向こう側に親子が発見されたベンチがある(C)AFP=時事

 

 今年3月4日、英国のソールズベリーで起きた元ロシア情報機関員親子の暗殺未遂事件は、ロシアと欧州の緊張関係に新たな火種をもたらした。

 被害にあったセルゲイ・スクリパリはロシア軍の情報機関である参謀本部情報総局(GRU)の大佐であったが、英国の情報機関と内通するダブル・スパイとしても活動しており、ロシアで拘束されたのち、スパイ交換で2010年に米国に引き渡されていた(のちに英国へ亡命)。ちなみにこのとき交換されたのは、米国内で摘発されたロシア対外情報庁(SVR)のスパイ網で、その中には「美人すぎるスパイ」として有名なアンナ・チャップマンが含まれている。

 ロシアの政府機関が英国で暗殺作戦を行ったのはこれが初めてというわけではないが、使用されたのが極めて毒性の強い化学兵器「ノヴィチョク」であったこと、6月になってからロシアとは無関係と見られる一般市民が同じノヴィチョクの被害に遭い、うち1人が死亡したことなどが、英国側の態度を硬化させている。事件後、英国は欧米諸国に呼びかけ150人以上のロシア外交官を29カ国及びNATO(北大西洋条約機構)代表部から追放させ(英国からは23人)た。ロシア側もこれに強く反発し、報復措置として英国外交官を大量追放した。

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