また新しい携帯電話機が発売された――そう思ったら大きな勘違いかもしれない。アップルが狙うのは何か? おそらく携帯電話史上最速ではなかろうか。七月十一日に日本を含む世界二十一カ国で一斉に発売してからわずか三日で、「iPhone(アイフォーン)3G」の累計販売台数が百万台を超えた。「3G」は二代目だ。当初米国のみの販売だった初代アイフォーンは百万台売れるまで七十四日かかった。携帯音楽プレーヤーの代名詞の地位をソニーのウォークマンから奪取した「iPod(アイポッド)」の百万台突破には二年近くを要した。新型アイフォーンはこれまでにヒットしたアップル商品とは桁違いの大型商品になる可能性がある。 日本での三日間の販売台数は三万台に満たないといわれる。米国の四十万台、英国の二十五万台と比べ一桁少ない。九月までの販売計画で四十万台程度ともいわれ、やはり米英よりも少ない。だが、アップルがアイフォーンに込めたのは、世界市場全体の構造を変えようという壮大な野望だ。 アイフォーンの特徴とアップルが次々に打ち出す新サービスをみると、既存の携帯電話市場の中でシェアを奪うというより、全く新しい「アイフォーン市場」が生まれ、それが既存市場の成長速度に影を落とし、あり方を変えるような図式になると予想される。

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