したたかではあるけれど(C)AFP=時事

 

 本欄の「論争終止符『カスピ海』は『海』と認めるロシア・イランの思惑」(8月10日掲載)で報告したように、カスピ海の法的地位に関し周辺5カ国が合意したことは、欧州のエネルギー供給多様化問題にも大きな影響を与える可能性が高い。特に「ノルド・ストリーム2」プロジェクトを巡って厳しい批判を浴びているドイツは、EU(欧州連合)として長いあいだ支援してきた、カスピ海周辺の天然ガスを、ロシアを経由せずに欧州に持ち込む構想の実現に向けての第一歩としたい思惑だ。ロシアとの交渉力を維持するために、きわめて重要なものとなる。なお「ノルド・ストリーム2」とは、バルト海経由でロシアとドイツを結ぶ天然ガスパイプラインで、第1パイプラインが2011年に稼動開始している。第1パイプライン、すなわち「ノルド・ストリーム1」に並行して、同規模のパイプラインを、ウクライナ経由の送ガス契約が期限切れとなる2019年末までに稼動開始させたいというプロジェクトである。

『フィナンシャル・タイムズ』(FT)は8月21日、ドイツのアンゲラ・メルケル首相がアゼルバイジャンを訪問する、との記事を掲載した。明らかに、カスピ海周辺の天然ガスを、ロシアを迂回して供給できるよう働きかけを強める意向の表れ、という記事である。

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