独シュタインマイヤー外相の上昇速度

執筆者:金井和之2008年9月号

[ベルリン発]フランク・ヴァルター・シュタインマイヤー。現在のドイツ政治を語る上で、決して忘れてはならない名前だ。 この夏を終えると、ドイツは一年後に控えた連邦議会議員選挙に向けて政治色に染まる。「ねじれ」に悩む日本の手本ともされるドイツ大連立だが、中道右派のキリスト教民主・社会同盟(以下同盟)と、中道左派の社会民主党(SPD)は、自らが主導する政権の樹立へ向けた動きを加速させている。その台風の目が他ならぬシュタインマイヤー氏(五二)だ。 SPDに所属する彼は、外相であり、メルケル首相の補佐役の副首相も兼務する。修辞法を巧みに使う語り口とは対照的な、人なつこい笑顔と料理好きと紹介される意外な一面が強く人を引きつける。司法試験に合格し、大学の助手を務めた後、一九九一年にニーダーザクセン州首相府メディア法・政策担当官に就任。当時の同州首相で、後に連邦政府首相となるシュレーダー氏は、キャリア官僚で十代でSPDに入党した彼に目をつけ、同州の首相秘書室長や首相府長官に起用した。 九八年。SPDが十六年ぶりに政権を奪回し、首相となったシュレーダー氏は、彼を連邦政府に迎え入れ、九九年には首相府長官に据えた。彼は首相の期待通りに、社会保障改革の「アゲンダ2010」など政権が打ち出す改革路線を支えた。だが国民の不評を買った改革はSPDを二〇〇五年選挙で敗北に導くばかりか、党内部にも反対派と賛成派のしこりを残すことになる。

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