「やましいことは何もないのに突然両替ができなくなった。今後の資金繰りをどうしたらいいか……」 今、中国に進出している日系企業の経理担当者の多くは、同じ問題で頭を抱えている。中国政府が七月十四日から外貨管理規制を強化したためだ。中国国内の企業に送金される外貨は、専用口座に入金され、当局が輸出入記録などと照合してからでないと人民元に両替できなくなった。通達が出た時点では、「日系企業は真っ当な商売をしているから問題ない」(邦銀現地法人)という楽観的な見方もあったが、いざふたを開けてみれば、多少の金額の誤差を理由に口座を凍結されるケースが続発し、ちょっとしたパニック状態が続いている。 規制強化の背景には、「ホットマネー」と呼ばれる海外からの投機資金の流入が急増している事情がある。六月末時点の中国の外貨準備高は一兆八千八十八億ドルと、昨年末からの半年間で約二千八百億ドル増加した。ところが、このうち貿易黒字や直接投資などで説明がつくのは千五百億ドル余り。残額の大半は出所が不明で、投機資金の可能性が強いと見られる。さらに、一部の輸出代金や投資資金は水増しされてホットマネーの持ち込みに利用されている疑いが強く、これが今回の規制強化につながった。

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