福島「老舗魚店」に降りかかる「トリチウム水」海洋放出の難題(下)
2018年10月5日
筆者が福島県いわき市四倉町にある創業70年近い老舗「大川魚店」3代目の大川勝正さん(44)のもとを訪ねた今年9月8日の前後、震災前から地魚を出品する横浜タカシマ屋の「大東北展」があった。大川さん自身も現地でお客の応対をし、初日に『テレビ東京』の情報番組が自慢の「うにみそ」などを紹介してくれた。
「そんな応援ももらい、売上はよかったよ。原発事故の後の数年は『被災地になって、かわいそう、がんばって』という雰囲気もあったし、あからさまに福島の魚を嫌がり拒否する人もいた。が、今は『安全なのか?』よりも『これ、おいしいですか?』と聞いてくれる。検査データを添えなくても、普通の店として受け入れてもらえる。7年掛かって、ようやくここまで来た感がある。これから地元にも力を入れなくては」
震災前の約8倍に増えたヒラメ
浜通りの魚への需要は全国で高まっている。例えば「春告げ魚」といわれるコウナゴ(小女子)だ。3月に相馬、いわきの沿岸で獲られる小魚で、釜揚げ、つくだ煮にされる。伊勢湾、瀬戸内など他産地で不漁が続き、全国で品薄となっている。
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