「言いなり起用内閣」に生体反応なし

執筆者:浜健太郎2008年9月号

「太郎ちゃんは子どもだ」 内閣改造に先立ち、福田康夫首相から自民党幹事長就任の要請を受けた麻生太郎氏が、受諾の条件として選挙対策委員長を格下げし党三役に戻すことを要求したと伝え聞き、古賀誠選対委員長はこうつぶやいた。 結局、選対委員長は存続となり、四役ポストがそのまま残ったが、他にも伝えられる「禅譲密約説」を含め、麻生氏がここまで強気の姿勢をとったのは、党内外の情勢を見極めた上でのことだった。 人事の振り出しは、来年九月の衆議院議員の任期満了を控えて選挙の時期が焦点となり出し、公明党から「福田首相では選挙は戦えない」という声が湧き上がったこと。そこで、選挙の顔として両党実力者が思い描いたのが麻生氏だった。改造の前夜、福田首相が山形で静養中の麻生氏に電話を入れたのは、こうした経緯からだ。 だが、党役員人事・内閣改造は、総理大臣が、何かを成し遂げるために行なうものであり、当然、時の権力者である首相の強い意志が示されるはずのものだ。しかし、福田首相は、今回の人事で、何らかのリーダーシップを発揮できたのだろうか。早くもバラマキ派始動 内閣改造当日の午前、首相公邸で行なわれた福田首相との会談で、麻生氏は、党の政策責任者である政調会長に、“郵政造反組”で増税派の保利耕輔氏の起用を求め、福田首相も了解する。この時点で、福田首相は元橋本派で無派閥の保利氏を津島派とカウントしていた。

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