握手はしていても硬い表情とひきつった苦笑い(C)AFP=時事

 

「『覇権』という言葉は使わないでもらえないか」――。

 9月、講演のために招聘された著名な中国政府系シンクタンク側から、筆者は事前にそう念押しされた。筆者が講演のテーマとして提示していたのは、中国語では『全球話語権競争』である。直訳すれば「グローバルな発言権をめぐる競争」となろうか。

 実質的テーマは、「米中貿易戦争の本質は、構造的な覇権争い」ということだ。

 この講演時の中国側研究者との意見交換は、貿易戦争を仕掛けた米国に対する中国側の対応についてが主軸となり、政府幹部への聞き取りは、習近平政権の対応の是非が主体となった。

 本稿は、北京の中国共産党筋とのこうしたやりとりを含め、中国側が披露した認識を抜粋し構成してみたい。

「自主開発」を政権の求心力に

 講演では、「戦争」という言葉も「摩擦」に代えるよう注文されたが、「覇権」も「戦争」も活発な議論のなかで次第にお構いなしとなった。

 米中貿易戦争の本質は、ドナルド・トランプ米大統領がさきの国連演説で「技術移転の強要、知的財産の略奪」と指摘したように、中国のデジタル覇権、ハイテク覇権の阻止にある。

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