防衛省は国産戦闘機の開発を目指し、来年度からの七年間で総額四百億円を投じて「先進技術実証機」を製作することを決めた。初飛行を二〇一三年度に予定している。成功すれば、航空自衛隊が保有するF15戦闘機の有力後継機に急浮上するが、ことはそう簡単ではない。 実証機は日本の航空機技術を盛り込み、三六〇度見える世界初の全周レーダーを搭載、敵のレーダーには映りにくいステルス性を持つ機体になる。既に三菱重工が模擬機体を製造しており、これにIHIが製造する国産エンジンを二基搭載する。 航空自衛隊や各メーカーの狙いは、戦闘機の量産化。高い性能が確認できれば、武器システムを搭載して本格的な戦闘機の開発に切り換える。日本が純国産戦闘機を造ることになれば、ゼロ戦などを生み出した太平洋戦争以来となる。 だが、問題は山積している。防衛省幹部は語る。「予想されるのは米国からの圧力です。FSXと呼ばれたF2支援戦闘機の場合、日米共同開発を強要され、しかも米国製のF16戦闘機を母体にせざるを得なかった」。今回、先進技術実証機と呼び、将来戦闘機といわないのは「目立たなくするため」と打ち明ける。 もうひとつの問題は技術そのものにある。炭素繊維の複合材をふんだんに使うが、この複合材こそがF2支援戦闘機を欠陥機にした最大の要因だった。「軽量なのはいいが強度が不足しがち。だが、三菱重工が受注したボーイング787の主翼は全部複合材。技術は進歩している」というが、設計通りにいかないのが航空機。F2の二の舞が懸念される。

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