「首相」を長持ちさせるコツ

執筆者:2008年10月号

 福田康夫首相の退陣表明記者会見をテレビで見ていたら、最後にこういう質問が出た。「首相の会見は他人事のようだといわれてきたが、今日もそういう印象を受けた」。それに対して首相は少しばかりキッとなって「私は自分を客観的に見ることができるんですよ。あなたとは違うんです」と答えた。この答え方が悪いと、辞めると言ったあとも叩かれている。福田首相の肩を持つわけではないが、この質問の仕方はいくらなんでも一国の宰相に対して失礼ではないだろうか。 首相を辞めるという決断は重いものである。企業のトップが不祥事で辞めるケースとはまったく違う。したがって辞任を発表する会見が他人事などであるわけがない。そう聞こえたとすれば、聞くほうがおかしいのか、感情を抑えた首相の話し方のためだ。すなわち、潔い進退、などと褒めそやさないまでも、淡々とした辞め際ぐらいの賛辞があってもおかしくないぐらいだ。 芸能人やスポーツ選手には甘い問いかけしかしないテレビも、政治家に対しては相手を怒らせるぐらいの質問をするのが正しい姿勢と勘違いしているようだ。記者会見も同じである。ジャーナリズムとして大事なのは、記者会見のやりとりの場で己の存在感を示すのではなく、しっかりと時間をかけた調査報道をすることなのである。

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