『素顔のヴィルトゥオーソ』第3回 ヴァイオリニスト木嶋真優

執筆者:フォーサイト編集部2018年12月19日
楽器はNPO法人 イエロー・エンジェル、宗次コレクションより特別に貸与されたAntonio Stradivari 1699 ”Walner”  撮影・青木登(以下同)

 

 日本とヨーロッパを行き来しながらソリストとして活躍している木嶋真優さんは、次代を担う若きヴァイオリニストだ。

 世界的な名教師ザハール・ブロン(1947~)に才能を見出され、14歳で渡独。現代を代表するチェリスト兼指揮者のムスティスラフ・ロストロポーヴィチ(1927~2007)に引き合わされ、彼をして「世界で最も優れた若手ヴァイオリニスト」と言わしめた。

 ケルン音楽大学と同大学院を首席で卒業した現在は、ソリストとしての活動に軸足を置きつつ、オーケストラとの共演や音楽祭への出演、ロストロポーヴィチ氏の教えだった楽曲のプロデュースなどを行っている。

「10年を経てようやく言われたことをやっている」

 そう言って本人は笑う。

「天才少女」から挫折を乗り越え「実力派」へと脱皮した彼女の軌跡を追った。

ブロンとの出会い

話題がヴァイオリンになった途端、ガラッと表情が変わった。

 兵庫県神戸市に生まれた木嶋さんがヴァイオリンを始めたのは、3歳半の時。

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