今、プラスチックは、わたしたちの生活に欠かせない素材だ。机の上を見回してもパソコンのキーボード、液晶ディスプレイの枠材や液晶の膜、携帯電話のボディーや基板に使われ、画面を見ている目にはプラスチック製のコンタクトレンズがはめられている。車に乗れば内装材だけでなくバンパーや燃料タンク、二枚のガラスに挟まれてガラスの飛散を防ぐプラスチックなど安全に係わる重要部分にも使われている。環境への影響で賛否両論はあるが、スーパーのレジ袋も正直、便利だ。 二〇世紀は石油の時代と言われ、それは石油を原料とするプラスチックの時代でもあった。新たなプラスチックの開発はやり尽くされたと言われながらも、さらに“新種”を開発する試みが続いている。化学メーカーを取材すれば、技術者達は、「この世に存在していなかった新素材を創るのが夢だ」と異口同音に語る。 そして石油資源の価格高騰や枯渇、環境問題などを背景に、石油という化石由来原料に代わるプラスチック原料の研究が本格化してきた。その本命が、植物や微生物を原料とするグリーンプラスチック、バイオプラスチックだ。この分野では、まだ世界の覇者はいない。むしろ日本メーカーの研究開発と実用化への試みが先行している。植物といっても、食用になる「可食」原料では、世界の食糧問題にも関わってくる。非化石だけでなく非可食原料へと模索を続けるプラスチック業界のものづくりを主にトウモロコシから作られるポリ乳酸と呼ばれるバイオプラスチックを軸に探った。

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