大中華思想五輪

執筆者:名越健郎2008年10月号

 アジアで3回目、社会主義国で2回目の夏季五輪となった北京五輪は、中国の異質性を印象付ける大会だった。 開会式の花火のCG(コンピューター・グラフィックス)化や少女独唱の“口パク”はまだしも、中国の56民族を代表し、民族衣装を着て行進した子供たちの大半が漢民族だった事実は、チベットやウイグルの民族弾圧に蓋をした形だ。歴史と文明を誇示した延々4時間の開会式と合わせ、「大中華思想」丸出しだった。社会主義色や中国現代史が皆無だった点も興味深い。 取材制限や記者への暴行もあったが、暴動やデモが最小限だったのは、人海戦術で徹底鎮圧したためだろう。日本側が憂慮していた反日騒ぎは、中国政府が命じた「文明的観戦」で抑えられたようだ。 中国の公安当局が五輪期間中の環境保護策を発表した。「会期中のデモ隊鎮圧はハイブリッド戦車で行なう」 西側記者が北京市幹部に記者会見で質問した。「北京のスモッグは何とかならないのか」「あれは霧だ。……ベンゼンや鉛は含有しているが」 問 北京五輪の最初の競技種目は? 答 障害物聖火リレーだ。 五輪会期中、北京空港に各国語でポスターが掲げられた。 中国語「熱烈歓迎!」 英語「Welcome!」

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