元ブルガリア国王、元首相のシメオン2世(筆者撮影、以下同)

 

 今回のブルガリア訪問の主目的は、元ブルガリア国王であり元首相でもあるシメオン2世ことシメオン・サクスコブルクゴツキに対するインタビューと関連取材だった。

「欧州の火薬庫」

 現在81歳のシメオン2世は、父の急死によって戦中の1943年に6歳で即位し、ソ連の支配下に入って人民共和国に移行した46年に9歳で退位した。その後亡命先のスペインでビジネスマンとして成功したが、民主化後の96年に帰国した際、指導者不在で迷走を続けていたこの国の市民に熱狂的に迎えられ、2001~05年まで首相を務めた。元国王が共和国の首相になるという前代未聞の事態である。その数奇な運命については、『朝日新聞GLOBE+』(9歳で王位を追われた元国王、担がれて首相に ブルガリアの元君主、数奇な人生 2019年1月8日 参照)で報告したので繰り返しを避けるが、政治経験のない彼にすがるほど、当時の国民は困窮し、また困惑していたと言える。

 共産主義独裁に対する市民運動が独自に芽生えたポーランドやハンガリーに比べ、ソ連の忠実な衛星国だったブルガリアにとって、意識の芽生えと不断の努力を求められる民主主義はなかなか荷が重い存在だったのかもしれない。

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