静かに蔓延「モンサント」の遺伝子組み換え穀物

執筆者:一ノ口晴人2008年11月号

知らないうちに食卓に載っている「組み換え作物」。その種子を作り出す巨大企業の内幕を、我々は覗いたことがない。 世界中からマネーが流れ込む金融大国アメリカ。担い手となってきた投資銀行が拡げた傷が世界経済を傷つけ、その威信には陰りが差した。対照的に、世界中に穀物を供給する農業大国アメリカの存在感は高まる一方だ。その実体は、ほんの一握りの巨大企業と国家(米農務省)が一体となった産官アグロ・コングロマリット。世界貿易機関(WTO)の貿易交渉が停滞する中、コングロマリットの軸足は、関税引き下げによる輸出市場の拡大から、遺伝子組み換え技術やエタノール生産など科学・技術を使った競争力の強化に移っている。 その尖兵がモンサント。スペイン語で「聖なる山」を意味する遺伝子組み換え穀物の巨大企業だ。社名の由来は創業者の妻の旧姓。モンサント家の家紋には「In Bello Quies(闘争を経て静寂を得る)」というラテン語の格言が記されているという。同社の「闘争」は洗練の度を増しながら、人跡未踏の山頂を目指しているようにみえる。セールストークは巧妙 創業は一九〇一年。最初は人工甘味料サッカリンの製造会社として設立され、コーラなど清涼飲料の市場拡大で成長した。その後、硫酸など化学薬品分野に進出。独占的に販売したPCB(ポリ塩化ビフェニール)は収益の柱の一つだった。四〇年代からはプラスチックや化学繊維にも事業領域を広げ、六〇年代初頭からのベトナム戦争では、米化学大手ダウ・ケミカルなど六社と手を組み米軍にダイオキシンを含む枯葉剤を供給。催奇形性などが問題視された。その“技術”は、後に除草剤の開発に使われ、七六年に商品化された「ラウンドアップ」は世界中に売られた。

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