ロシアも世界もグルジアに気をとられている間に、旧ソ連圏の「柔らかい脇腹」中央アジアで不穏な動きがあった。北朝鮮並みの閉鎖国家、トルクメニスタンの首都アシガバートで九月中旬に起きた銃撃戦がそれだ。 一昨年急逝したニヤゾフ前大統領の私生児とも噂されるベルドイムハメドフ大統領が独裁体制を敷くトルクメニスタンは、報道統制が厳しく、事件や事故はほとんど公にならない。だが装甲車まで出動して多数の死者を出した市街地での騒ぎを隠すことはできず、銃撃戦は「麻薬組織の鎮圧」と発表された。 しかし、そこはイスラム過激派と麻薬組織が密接につながる中央アジアのこと、これまで押さえ込まれてきた反体制イスラム原理主義組織の台頭が銃撃戦に発展したとの有力説がある。 政権の内部対立説もある。隣国アフガニスタンでは近年、麻薬生産が急増。トルクメニスタン、ロシアを経由して欧州へと大量に密輸されているが、密輸組織からの賄賂はトルクメニスタン内務省の有力な収入源だった。ところが、ベルドイムハメドフ大統領が今年一月に麻薬取締委員会を新設したため、利権争いが起きたというのだ。 独裁政権の綻びは、イスラム過激派の勢力が強い隣国ウズベキスタンなど、中央アジア全域の不安定化にもつながりかねないとみられている。

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