歴史に残る大暴落である。 世界同時株安の主因は米国経済の混乱だが、日経平均の暴落の背景には、日本特有の要因もある。本誌が今年三月号で報じた償還条件付ファンド「日経平均リンク債」の存在だ。 簡略化して説明しよう。 主に国内外の証券会社が発行・運用するこの商品は元本を保証しない。うまくすれば三―六%という高い利息を得られるが、ある「条件」に抵触すると元本割れのリスクがある。天国と地獄の分かれ目となる「条件」は商品が設定する日経平均株価の終値で、「ノックイン価格」と呼ばれる。その多くはファンド設定時の平均株価より二〇―二五%も低い。「そこまで下がる可能性は低いだろう」という価格設定がリスク含みの商品を購入させる呼び水となるわけだ。 投資期間は一年から二年程度。この期間中に日経平均株価の終値がノックイン価格を下回らなければ、額面に高利息をつけて償還される。 だが、一度でもノックイン価格を下回ると元本割れでの償還となるため、日経平均がノックイン価格に近づくと、リンク債を抱える証券会社など機関投資家は買い建てていた日経平均先物の売りに回る。たとえば、現在の平均株価で売って三カ月後に買い戻すという取引を“予約”しておく。現在の平均株価が九千円で三カ月後に七千円になっていれば、差額の二千円が利益となる。

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