「インド太平洋戦略」展開に不可欠な「エチオピア」との関係構築
2019年4月9日
私は3月にアフリカ5カ国を回ったが、最初に訪問したのは、エチオピアだった。昨年4月にアビー・アハメド首相(エチオピア政治では首相が実権を握る)の政権ができてから、静かな変化が生じているという噂があったので、関係者に話を聞いてみたかった。訪問の感触としては、微妙だが変化は訪れている、ということだ。「自由で開かれたインド太平洋戦略」を掲げる日本にとっては、エチオピアとの関係構築は、その戦略の枠組みを作り出す意味を持ってくるかもしれない。
エチオピアという地域大国
エチオピアは、人口1億人を擁するアフリカの大国である。AU(アフリカ連合)の本部がエチオピアの首都アディス・アベバに置かれていることも、アフリカ大陸においてヨーロッパ植民地支配に服することのなかった稀有な国としての、エチオピアの象徴的な地位を表している(そもそも国家のアイデンティティが数世紀にわたって継続していること自体が、アフリカでは稀有だ)。
経済規模においては、西アフリカのナイジェリア、南部アフリカの南アフリカには遠く及ばないが、同じ東アフリカではケニアと同規模のGDP(国内総生産)水準を持つ。軍事力で言えば、14万人の兵力を持ち、ナイジェリアとともにアフリカの軍事大国と言ってよい。エチオピアは、国連やAUの平和活動から、アル・シャバブ掃討作戦といった対テロ戦争の最前線に至る場面で、その兵力を投入している重要国だ。
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