「獲らぬ狸」民主党への苦言

執筆者:2008年11月号

 麻生太郎対小沢一郎。どちらに勝ってほしいかと尋ねると小沢、あるいは民主党と答える人が多くなった。「一度、民主党にやらせてみるのがいい」と大企業のトップがそう口にしてもさほど珍しいことではなくなった。だとすれば、いや、なればこそ訊いておかなければならないことがある。間もなく政権を取るつもりらしいので、いまのうちに問いただしておかなければならないことがいくつかある。二〇〇六年二月号の本欄でこう書いた。「壁に『東大合格』と書いた紙を貼り、それでいて少しも受験勉強をしようとしない受験生。民主党を見ていると、いつもそう思う」。意欲が先走って果たして合格ラインに到達するだけの研鑽を積んだかどうか疑問に感じるのである。 まず、三年前の小泉郵政解散のときの民主党の惨敗の内容について、きちんと検証しているかどうかである。東京、神奈川、千葉、埼玉の一都三県に日本の人口の三割が住んでいる。日本の心臓部ともいうべきこの首都圏に、衆議院の小選挙区は七一ある。その中で民主党はいくつの小選挙区を制したか。東京は二五の小選挙区でいくつ勝ったのか。 結論はこうだ。東京は菅直人一人、千葉は野田佳彦一人、埼玉は枝野幸男ら三人、神奈川ゼロで、計五人である。これに関西を加えるともっとすごいことになる。大阪は一九の小選挙区のうち二選挙区だけ。兵庫は一二選挙区のすべてで敗北。首都圏と大阪、兵庫で一〇二選挙区のうち民主党はわずか七選挙区しか勝っていないのである。その当時といまとで何が変わったのか。党首が岡田克也から小沢一郎に代っている(あいだに前原誠司がいた)。それに〇七年の参議院選挙で野党が多数となり、いわゆるねじれ国会となった。与野党対決の構図の中で、自民党は政権担当能力を著しく欠いたように見える。

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