ジャマイカに根を張る「カリブの漢族」たち

執筆者:竹田いさみ2008年11月号

「ハロー・ミスター・チン!」と、カリブ海の観光地、ジャマイカで見ず知らずの人に臆面もなく挨拶され、戸惑う。 不思議なことにジャマイカでは、東洋系アジア人を「チンさん」と呼ぶことが、ごく当たり前らしい。長年ジャマイカに住む日本人でも、顔見知りのジャマイカ人から、しばしば「チンさん」と声をかけられるそうで、いつまで経っても中国人扱いだと嘆く。ローカルコミュニティーでは日本人の存在感(在留邦人は二〇〇七年に百八十五人)は小さく、中国系ジャマイカ人が幅を利かせる。 日本からの直行便はなく、ジャマイカ島に辿り着くのはたいへんだ。ニューヨークやフロリダなどでどうしても一泊しなければならない。日本人にはブルーマウンテン・コーヒーや、ディズニーランドの人気アトラクション「カリブの海賊」でお馴染みの国だ。映画「パイレーツ・オブ・カリビアン」の舞台設定はチャールズ要塞の遺跡が残るポートロイヤルだが、ここまで足を運ぶ日本人ツアー客はさほど多くない。 北京五輪の男子陸上競技で金メダル三個をもぎ取ったウサイン・ボルトの活躍で、ジャマイカは一躍世界の注目を浴びた。カルガリー冬季五輪(一九八八年)に、雪とは無縁の常夏の国からボブスレーチームが参加して世界中の話題をさらったことがあるが、あのボブスレーチームもジャマイカ生まれ。その奮闘ぶりを題材に、ディズニー映画「クール・ランニング」も製作された。

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